現実を知って

岩手の宮古市に知り合いの女性がいます。

いました、と言う方が正しいでしょうか。


本当は、知るのが恐かったのです。

もうお歳だし、知らない方が幸せかも・・・

そう思っていました。


今日、覚悟して調べたら、

「この方が亡くなったのを見た、という情報があります」

とだけありました。


彼女のお宅は、宮古駅のすぐ近く、磯鶏という住所でした。

海に近く、今回の津波の被害が大きかったところの一つです。

近くに「浄土が浜」という名勝があって、それは美しい海岸でした。


大学生の頃、浦和のデパートで開催されていた「大いわて展」。

そこで、ある人形作家さんに出会い「良かったら遊びに来てください」

なんて言われたのを真に受けて、突然一人で旅に出ました。

いつも思いつきで、思いついたらすぐ行動、の私です。


あんまり岩手が楽しかったので、翌年、今度は母を連れて伺いました。

今思えば、先方にとっては、はた迷惑な話だったに違いありません。

でも、一泊させていただいた人形作家さんの工房で飲んだ”白湯”が甘くて

甘くて、なんてお水が美味しいところなのかなあ、と感動したものです。

工房には、彼の生き方がちょっと覗けるような文章も書いてあったりして。


翌日、どこに行くのか停まるのか未定だった私たち親子に、工房のお手伝

いをしていた女性が「私の姉が宮古にいるから、聞いてあげるわよ」と。

まさかいいよなんて普通は言わないわよね、と思ったら「是非どうぞ!」。

こうして、全くの他人だったその方に、突然お世話になることになったので

す。

かれこれ25年あまりも前の話です。


もと漁師のご主人がまだ生きておられて、早朝に市場に行って名物の海鞘

(ホヤ)を始め、新鮮なお魚をおおご馳走してくれたのです。

その上「停まっていってね」と、図々しくも結局赤の他人のお宅に二泊も!


美しい鍾乳洞で知られる「龍泉洞」に私の運転でドライブしたり、近所の

ドライブインで安くて美味しい海鮮どんぶりを食べたり。

奥さん自身もお料理がとても上手で、何をいただいても美味しかった・・。

横浜に息子が住んでいる、と仰っていました。


結婚直前の夫との旅行の途中でも寄らせていただいたっけ。


毎年お年賀状をいただいていました。

私はちっともお返事が出せなくて。

ごめんなさい。


それにしても災害はむごい。

悲しくて悲しくて、どうして罪もない人々がこんな目に・・・。

血のつながりのない人だけど、涙があふれます。


今日は宮古のおばさんのために、手を合わせようと思います。

どうぞ、安らかにお眠りください。