また岩手に行きたい

岩手には、結婚前に行ったきりなので、かれこれ16年くらい行っていません。

初めて一人で行ったのは19歳か20歳の夏でした。


埼玉県の浦和に用があって、帰り道に何気なく寄ったデパートで「大いわて展」

が開催されていました。

そこで「六原張り子」に出会いました。


どことなく愛嬌があって、素朴で、自然な色合いがとても素敵で、直ぐに一目

惚れしてしまったのです。

特に「うさぎ舞い」と「じょじょ猫」、もの凄く迷いました。

だって、おサイフの中には一つ分買えるお金しか無かったんですもの。

随分長いこと、右見て左見て、左見て右見て・・・とうとう「うさぎ舞い」に

決めました。昨日のことのように覚えています。

すると、その張り子を作った作家さんが「そんなに気に入ってくれたのなら、

岩手まで遊びに来てください。」と、六原張り子の説明文の書かれた小さな紙

切れをくれました。そこに工房の住所が書かれていました。


それが夏休み前で、その夏休みには岩手行きを決行。

岩手のどこの駅かも確認しないで、夜行で北上駅へ。早朝着いたらあまりにも

眠くて、駅前通りに民宿を探し出して「すみませんが2時間寝かしていただけ

ませんか?」と頼み込み、2,000円で仮眠をとらせていただきました。

それから、北上駅から作家さんの工房へ電話をしたら、駅が違うと言う。

そりゃ、確かめてないのだから当然・・・。

ようやく「沢はん工房」に辿り着き、張り子のお面を作らせてもらい、暫くの

時間楽しく過ごしました。

それから、盛岡駅まで移動し、観光案内に行って今夜の宿を、と思ったら、そ

の日はなんと「さんさ踊り」。宿なんて空いているはずありません。

これは困った・・・そこで路線図を見て、どこか宿のありそうなところは無い

ものか探しました。すると「渋民」という駅がありました。

確か渋民は石川啄木と縁があったような・・・ここに行けば宿舎の一つくらい

あるだろう。と思ってローカル線に乗り込みました。

走り始めて間もなくすごい夕立になりました。それで、渋民駅に着いてみると

とても小さな可愛らしい駅で、降りてしまったものの、不安が・・・。

駅員さんに民宿などありませんか?と聞くと「(目の前の建物を指差し)ああ

ここだけだよ。」。

夜7時を回っていたのですが、事情を話すと「夜ごはんは余り物で良かったら

出来ますよ」と言ってくださって感謝感激。

そのお宿、現場仕事の男の人達が常宿にしている所らしく、部屋の仕切りは襖

のみ、出入り口も襖で、もちろん鍵はついていません。最初はちょっと心配で

したが、宿の方が「家のお客さんはみんな良い人だから大丈夫よ」と言うので

信じることにしました。

さて、お風呂にどうぞと言われ、入ってみると・・・うーん、さすがの私も入

るのに躊躇するほど・・・お湯がきちゃない。でも夕立に濡れて寒かったので

入りましたよ。湯船を出る時に流せばいいんですから〜。


翌日、「駅から徒歩30分」と案内されていた”石川啄木記念館”に行くことに

しました。

宿の清算を済ませ、お礼を述べて歩き始めました。


少し歩いていくと、軽トラックが横付けしてきて「ねえあんた、どこ行くの?」

と若い男の人が声をかけてくるではありませんか。「え!?こんなところでナンパ

??」と警戒していましたが、人の良さそうな人(と、無防備な私)。

「石川啄木記念館です。」

「えー?そりゃ無茶だよ、遠いよ〜?乗せていってあげるから乗りなさいよ。」

と言う。「え、いいです。歩きますから。」と何度か断りましたが、相手の方は

「本当に遠いから、いくら何でも歩けないって。」とあんまり言うし、そんなに

悪い人には思えませんでした。

結局、見ず知らずの男の人の車(軽トラですけど)に乗せていただくことに。

・・・いやあ、遠かった。徒歩30分て、誰が歩いたの??

「ね?だから言ったでしょ?」と、その人はあっけらかんと笑っていました。

だあれもいない石川啄木記念館をゆっくり見て、そのまま通りを渡り、北上川が

見える所まで行きました。

北上川は滔々(とうとう)と流れる、ゆったりした川でした。近くで草野球のか

け声が聞こえていました。

「やわらかに 柳青める 北上の 岸辺目に見ゆ 泣けと ごとくに」という歌
碑が建っていました。


どの人も本当に親切で温かかった。岩手の訛りと共に私にとっては本当に素敵な、

大切な、大好きな思い出です。

だから、今回の地震で大変な被災をしたこと、胸を痛めているのです。


一日も早く、立ち直ってくださいますように、お祈りしています。是非またいつ

か行きたいのです。日本の素敵なところがいっぱい残っている岩手に。


六原張り子 沢はん工房

http://www6.ocn.ne.jp/~sawahan/